イケメン王宮◆ユーリ×プリンセスの物語【R18あり】
第30章 【禁断の果実】~第7章 堕ちる~
強い風のせいでドレスがはためいて、
身体を持っていかれそうになる。
が、
男は気にせず、
サラの腕をぐいぐい引っ張っていく。
『いやっ、何処に……っ?』
「あるお方の所に届けるだけだ。
心配するな、殺されはしないだろう。
多分な」
にやり、と下品な笑みを浮かべる男に
サラは、ぞくりとする。
手を引かれたまま、
馬車からどんどん離されていく。
振り返ると、馬車の周りでは、
騎士団が戦闘を繰り広げていて、
サラを助け出す余裕はない。
(っ……みんなっ)
全員の無事を祈りながら
サラは為す術がなかった。
馬車から随分離れた時、
突然、目の前を黒い何かが横切った。
(え、なに?)
サラが思うより早く
「うっ!」
呻き声が聞こえて
サラの手を引いていた男が
どさりと倒れた。
(っ…!)
何が起こったか分からないサラの前に
屈んでいた人影が立ち上がる。
強い風でマントが大きくはためき
人影の顔を隠した。
(ウィスタリア騎士団のマント…?)
風が止み、
マントが落ちて、陰になっていた顔が覗くと、
サラは目を見開いた。
(うそ……)
ウィスタリア騎士団の軍服に身を包み、
サラの前に現れたのは
数週間前、ウィスタリア城から姿を消した
ユーリだった。