イケメン王宮◆ユーリ×プリンセスの物語【R18あり】
第29章 【禁断の果実】~第6章 瞑る~
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「……い。
……おいって」
『え?あ、ごめん』
気付くと、隣に座るアランが
サラの顔を覗き込んでいた。
艶やかな茶色の髪が
夜風にサラサラと流れている。
それから数日後の、
ある夜。
「話がある」
と呼び出されたサラは、
アランと二人、
中庭のベンチに、並んで腰を下ろしていた。
「お前さ、なんかあった?」
『え?なにかって?』
「ユーリと」
[っ……]
唐突なユーリの名前に、
サラの小さな胸が、どくどくと鳴る。
『別に……』
「本当に?」
『……本当』
[アラン…どうして分かったんだろう。
顔に、出てた……のかな。
気を付けているつもりだったのだけれど]
ユーリとあんな事になってからも
サラは、いつも通り振る舞っていた。
もちろんそれは
プリンセスとして、当然のこと。
だが、それ以上に、サラ自身、
忙しい王宮のみんなに、心配をかけたくなかった。
でも
正直、心はぼろぼろで。
鬱ぎ込んでしまいたいと、
何度、思ったことか。
ユーリの事を話す気はないけれど、
少しだけでもいい、
誰かに話をきいてもらいと
何度、思ったことか。
今も、アランの問いかけに
つい、縋ってしまいそうになる。
[でも、言ったら、きっと心配するよね。
アラン、優しいから]
『アランこそ。
何かあったの?
夜中に呼び出すなんて』
サラは、アランに
ふわりと微笑みかけた。
アランは、
紅い瞳で探るようにサラを見つめたあと…
ぐっ、とサラの手を引いて
腕の中に閉じ込めた。