イケメン王宮◆ユーリ×プリンセスの物語【R18あり】
第27章 【禁断の果実】~第4章 揺れる~
「行くな…」
『え?』
少し痛いくらいに込められた力に
びくりとすると
また低く囁くような声が響いた。
「……行くな」
アランの赤い瞳は
やはり宙を彷徨っていて
まだ意識が混沌としているのが分かる。
『アラン…』
[アランがこんな事言うなんて…
よっぽど辛いんだ…
………ごめんなさい、アラン]
サラは涙を堪えてアランの瞳を覗き込み
優しく微笑みかけると
手首を掴むアランの手を
そっと剥がして
両手で包んだ。
『大丈夫、お医者様を呼んだら
すぐに戻って来るから。
少しだけ待ってて……』
と突然。
アランの手が
サラの後頭部に差し入れられ
ゆっくりと引き寄せた。
『え?』
そう思ったのも一瞬……
アランは
サラの
唇を
そっと奪った。
見開いたサラの目の前に
伏せられた長い睫が見える。
何が起きたのか
分からなかった。
混乱で身体が硬直する。
はっと我に返って
咄嗟に押し返そうとするが
アランが怪我をしている事を思い出し
傷が広がるのではないかと
抵抗するのを躊躇ってしてしまう。
触れるだけのキス。
その時間は
刹那にも
無窮にも感じる。
やがて
後頭部の手を緩めて
サラを開放すると
「……ここに…いろよ…」
吐息交じりに零した。
アランの瞳はやはり
ぼんやりと宙を彷徨っていた。