第1章 浮気の予感
「さむーーーい!臣まだかなぁ。」
師走の街は、道行く人がなんとなくせわしない。
私は待ち合わせの場所で、手をこすりながら臣の車を待っていた。
いつもは時間にきっちりな彼が珍しく遅刻だ。
スマホを見ても連絡は来ていない。電話をかけても出ない。
何かあったのか不安になってくる。
20分程外で待っていたが寒さに耐えられず近くのカフェへ入った。
「はー。あったかーい。」
ミルクティーに癒されながらスマホを見る。
LINEが来ていた。
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わりい!
打ち合わせが急きょ入った!
今日は会えそうになさそう。
まじでごめんな。
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がっかりしたけど、忙しい彼だ。仕方ない。
連絡くれるだけまだましだよね。
返事を送って私はしばらくカフェであたたまると、帰路についた。
ご飯も食べて、お風呂から上がると今度は電話が鳴った。
出てみると臣だった。
「いま、マンションの前。早くあけて。」
「あれ?打ち合わせ終わったの?」
「思ったより早く終わった。さみー。早くあけてー。」
「あ、ごめん。今開けるね。」
しばらくすると玄関のチャイムが鳴った。
ドアを開けるなり、抱きついてきた。
「あっー。寒かったぁ〜」
「風邪引くからお風呂入っちゃいなよ。」
「怒ってる?」私の顔を覗き込んでくる。本当に綺麗な顔立ち。
「え?怒るわけないよ。仕事でしょ。仕方ないよ。それより早くあったまって。大事な時期なんだから。」
彼は嘘をつく時に口を尖らすクセがある。
「おう。」
口を尖らせながらそう言った。