第2章 もう一つの魔法の世界
「どこまでも白を切るつもりなら…今度は私の言い分を聞いて頂こうかしら!?」
紅玉の言い分はこうだった。
あの夜シンドバッドを一目見たくて宴の片隅にいや紅玉。
うん、それは俺も見た。
結局話かけることが出来なくて自室に帰ろうとした時、何者かに襲われた。
目が覚めたらシンドバッドの部屋で朝を迎えていた。
慌てて飛び出したところを女官に保護された、って事らしい。
「それは…つまり?」
「つまり、こういうことでありましょう!」
夏黄文が話に入って来た。
しかも説明は最悪のシナリオでだった。
「シンドバッド王は、自分に気のある紅玉姫に宴の席でひそかに目を付け…証拠一滅の為、姫君を昏倒させた上で行為に及んだのでありましょう!」
「「「うわああサイテー!!」」」
「最低ですね」
「お前等信じろよ、自分の王を…」
俺も思った。
真っ先に批判の声を上げたのはシンドバッドの部下らしき人だった。
『まずさぁ…証拠隠滅を図るくらい頭が良くて用意周到な奴がそのまま寝るとか、そんな間抜けなことするか?』
「それも一理ある! 全く…聞いてりゃ好き勝手言いやがって…俺が外交の最中に酒で失態を犯すなど、お前達は本当に思うのか!?」
「「「……」」」
な、何で沈黙なの?
「思います 私達は貴方を心底尊敬していますが、"酒ぐせ"この一点のみにおいては全く信用しておりません」
「毎度のことっスからね」
「酔った王に手を出されかけたという女性の苦情が絶えません」
「そうそう、この間なんて凄いおばあちゃんに手出しそうになったよね!」
「実は私も一度手を出されかけた事が…」
「なっ…んだとぉ!?」
『(ガクッ)!!』
どんだけ信用されてねぇんだよシンドバッド!
俺なんか酔った事ねぇからわかんねぇよ。
「何だよ…俺達の信頼関係はウソだったのかよ…!?」
「「「酔っ払いの言う事をいちいち信じてられるか!!」」」
「普段はいい王様なんだけどね~」
「下手な芝居は終わりでありますか? シンドバッド王」
いつにも増して迫るな夏黄文。
「やはり貴方は姫君の身に手を出したのだ そうなれば…責任をとるには
姫君と結婚する他ないと思いますが!?」
「!?」