第2章 もう一つの魔法の世界
「失礼、これ以上は本人の口から告げるのは酷というもの…私に続けさせてください」
そう言って前にでたのは紅玉の部下、夏黄文だった。
「姫君本人からの証言ではありますが…目撃者もおりますゆえ…受け入れがたくとも皆様、真実としてお受け取りくださいね…」
夏黄文の説明はこうだった。
シンドバッドが煌帝国に滞在する最後の夜に別れの酒宴が催された。
うん、俺も参加したからわかる。
その夜が明けて寝床で紅玉がふと隣を見ると…
全裸でシンドバッドが共に寝ていた、と。
「これで何もなかったというのなら是非ご説明頂きたく…シンドバッド王よ!!」
成程…そんな事男の俺に簡単に話せるワケねぇよな。
「煌帝国皇女の身を汚したシンドバッドめ!! 私と決闘しなさい!!
断れば、私は死ぬ!! 受けなければ貴方を殺して私も死ぬっ!!」
「うおお~」
「おいたわしや姫君」
『早まるな紅玉! そんな事しなくても大丈夫だから、な?』
「お兄様…うううぅ…」
シンドリア国王が淫行を働いたせいで皇女が自害とかしたらきっと戦争になる。
政治のことはよくわかんねぇけど、俺の予想はそうだと思う。
だが、気になる事がある。
『なぁシンドバッド、お前って酒弱いのか?』
「いいや 至って普通だと思うが」
『あの夜お前さ、一口が二口しか酒飲まなかったよな?』
「そうだよな あの夜王サマは全然酔ってなかったぜ」
「あぁ 確かな足取りで一人で部屋に戻るのを私達が見届けた」
「俺はそのまま眠ったのだ やはり姫とは何もなかった」
つまりシンドバッドが紅玉の部屋に行ったんじゃなくて、紅玉がシンドバッドの部屋に行ったって事だよな?
「では何故翌朝貴方の部屋に私がいたの!?」
「姫君…どうも私にはその記憶がないのだが…」
「じゃあ何故貴方は起きたら裸だったの!?
寝ている間に自然に服を脱ぎ捨ててしまう事があって!?」
「うむ、それはよくあることだ!」
「ふざけないでっ!!」
いやいや、それ威張る事じゃねぇからな?
紅玉がふざけてるって思うのも無理ねぇよ。
前に旅の途中寝てる間に盗賊に金属器と服丸ごと盗まれた事があるんだってな。
シンドバッドが煌帝国に来た時に本人に聞いたことあるよ。
でも紅玉、刃を顔スレスレに刺すのは危ないだろ。