第2章 もう一つの魔法の世界
<白龍side>
構えたままお互い動かない。
だが直感でわかる…アギト殿は強い、と。
視線、空気、威圧感…なんと言えばいいのかはわからないが感じる。
「はあっ!」
先ずは俺が切り掛かったが、アギト殿は余裕で受け止める。
繰り返し縦に、横に切り掛かるが全て受け止められてしまう。
一体何処で鍛えられたのだろうか。
どうしたら彼の様に強くなれるのだろうか。
もっと彼を知りたい。
『勝負中に考え事か?』
「貴方の事を考えてました」
『そらどう、も!』
斬撃を防いでいただけの動きだったが、アギト殿は俺の刀を振り払った。
本気を出してないだろうに、俺はフラついてしまう。
『はぁあ!』
「くっ!」
攻守交代、今度はアギト殿が俺に切り掛かって来た。
無駄の無い動きで一撃一撃の斬撃が重い…!
このままじゃあ俺の体力が持たない。
「はああっ!」
受け止めた斬撃を受け流してアギト殿の背後に回った。
無防備な背中…今だ!
『甘い!』
「!?」
背を向けたまま刀を持ち替えて、俺の斬撃を防いだ!?
背中にも目があるのかってくらい正確な動きだった。
「わっ、!」
今度は俺が受け流された。
グラついて地面に手をついてしまう。
その時、俺の頬の近くに黒い刀身が光った。
数秒後、俺は負けたのだと気付かされた。
「…参りました」
やはりアギト殿は強かった。
負けたのに、何故か清々しかった。
『Checkmate』
「何ですか? それは」
『俺達の世界の言葉で"俺の勝ち"って意味だ』
「そうですか」
アギト殿は謎だらけですけど、面白い方だと思った。
「次は俺だ!」
「俺が先ぃ!」
「是非私も!」
神官殿達がアギト殿と手合せを申し出ていた。
紅炎殿に助けを求めるが、逆に「次は俺だ」と言われて驚愕していた。
「ふふふっ」
本当に面白い方だ。
それから順番にアギト殿と手合せしたのでした。