第5章 さらば、もう一人の友よ
「…誰?」
『「!」』
ゆっくりと近付いて来る小さな藍色と白い猫。
二つの影は俺達の目の前でその足を止めた。
「っ、ジェラール…!?」
ウェンディとシャルルだった。
二人は大きく目を見開いた。
「ど、どういうこと!? だってアンタ捕まって…!」
あ、そーいえばウェンディにエドラスの事言うの忘れてたな。
「それは私とは別の人物だ」
「そんな…!」
「どう見たって…アンタ、ジェラールじゃない!?」
「…私は妖精の尻尾のミストガン…七年前はこの世界の事はよく知らず、君にはジェラールと名乗ってしまった」
その言葉に二人はそれぞれの理由で息を呑む。
そして、まさか、と呟きを溢すウェンディにジェラールが静かに頷く。
『そう…七年前の、あの時のジェラールはコイツだよ』
「ジェラール…っ、ずっと…ずっと会いたかったんだよ…?」
「会いに行けなくて、すまなかった…」
ポロポロと大粒の涙を溢すウェンディを見、ジェラールは申し訳なさそうに目を伏せる。
「…だが、今は再会を喜ぶ時間はない」
「「…?」」
「今すぐ…っ…」
『お、おい!』
言葉の途中、苦痛な表情を浮かべて、俺の方にぐらりと揺らいだジェラールに二人は目を見開く。
「今すぐ…この街を離れるんだ…っ…」
俺の支えがあっても、遂に倒れ込むかのように膝をつくジェラール。
その顔にはやはり苦痛の色。
そして息も少し乱れている。
ジェラールをこんな目にあわせやがって…絶対ぇアイツ殴ってやる。
「私の任務は失敗した…」
「、…」
「大きくなり過ぎたアニマは…もはや、私一人の手では抑えられない…」
ゴォ…と音を立て、空で雨雲が渦を巻き始めた。
ジェラールは絞り出すように言葉を紡ぐ。
「間もなく…マグノリアは消滅する…」