第1章 幼少期と日常
翌日、朝早くからアギトは村を出た。
山三つまでは"神速"を使い、四つ目からは魔力を使わずに超えた。
と言っても十分はやいのだが。
『…ここだよな』
昨日見つけたアオアシラの死骸があった場所に着いた。
何か敵の手掛かりはないかと思ったからだ。
『…ん?』
二匹目を見たとき、アギトは何かを見つけた。
血の様に赤い羽根をアオアシラの口に銜えていた。
触れてみるとそれは血で染まったのではなく、元々赤い羽根だったことがわかる。
鋭い爪…
アオアシラより大きくて…
肉食の…
赤い羽根…
『…もしかして、!』
一つの予想が思い浮かんだが、アギトは鋭い感覚で殺気を察知した。
周りを見回しても誰もいない(ナツ達以外)。
草木を踏み歩く音もない。
地中を移動する小さな揺れもない。
となると最後は…
『空!』
声と共にアギトはアオアシラから離れた。
少し遅れて、大きな赤い翼に木々が薙ぎ払われた。
そのお陰で見えた奴の正体…
『やっぱりお前か…』
赤い羽根に鋭い爪の肉食鳥…
『シムルグ!』