第2章 もう一つの魔法の世界
<side out>
煌帝国の宮廷某所。
そこにはアル・サーメン一同と練玉艶が戦いの様子を眺めていた。
玉座の様な椅子に座っていた玉艶は溜め息を吐いた。
「くだらない男だったわねぇ、マダル・モガメットとは…」
そう、"ソロモンの知恵"で<依り代>のルフの中に入ったアラジンによって計画は失敗。
"暗黒点"を引き降ろす事が出来なかったのだ。
「脆弱な"核"では役に立たなかったか…やはり私達の育てた極上の"暗黒点"を仕上げる必要がありそうですね」
「はい しかしお喜びください玉艶様…レームのマギが死に…そのルフが例の場所へ戻りました」
「そう…それはよかったわね…!」
玉艶は笑みを浮かべ、パンッと手を合わせた。
「今宵は祝杯をあげましょう
シェヘラザードが死んだレームの磐石は揺らぎます
そして今回マグノシュタットの<依り代>が役に立たなかったとはいえ、一回空いた<世界の穴>は数年間は塞がりません
即ち…私達が新たな"暗黒点"を仕上げれば、すぐにでも<我らが父>をお招き出来る
今度は小競り合う暇もなくね…
それにこちらにはすでに竜の王を招きいれています
焦ることは何もありません」
『へぇー、そーゆー事か』
「「「!?」」」
突如この場にいるハズのない男の声がした。
アル・サーメン一同は慌てふためくが、玉艶は逆に目を輝かせた。
「そこにいるのですね…アギト」
『まーな』
「姿を見せてください、我らが竜の王よ」
『俺はお前等のじゃねぇし王でもねぇよ けど、姿は見せてやるよ』
二、三秒待つと部屋の片隅に腕を組んだアギトが現れた。
正確にはアギトが見える様になったのだ。
前皇帝の葬式の時に使用した魔法、"透明"(クリア)で姿を隠しずっと監視していたのだ。