第2章 もう一つの魔法の世界
「ひ…火が消えた!? 火山の…」
『<依り代>だ!』
手を追っていくと、<依り代>から手が伸びているのに気が付いた。
しかも<依り代>は自分が生み出した黒いジンを自分の元へ集めていた。
「黒いジンを取り込んでいる!?」
「出したり引っ込めたり忙しい奴ぅ!」
<依り代>は防壁を解き、変形し始めた。
見た事ねぇからわかんねぇけど、<依り代>は卵子が徐々に人間の姿に変化するみてぇに変形していった。
変形し終えたそれは首が無くてガリガリに痩せ細った人間みたいだ。
―――キィインッ
『…っ、は?』
急に甲高い耳鳴りが俺を襲った。
そして目の前が真っ白になった。
いや、自分の姿が見えるから景色が真っ白になった、の方がいいのか。
そんな事はどうでもいい。
此処は…何処なんだ…?
「ア…ギト…?」
『!』
懐かしい、声がした。
この世界では聞くハズのない奴の声が。
俺は声がした方に振り向いた。
『…ナ、ツ…?』
そこには、少し成長したナツがいた。
何で? え?
どうしてお前が此処に…
「アギ…」
「アギト!」
『!!』
紅炎の声で我に返った。
景色はさっきのものに戻り、ナツの姿はなかった。
気のせい…だったのか…?