第2章 もう一つの魔法の世界
<アギトside>
皇帝陛下の葬式中、俺は"透明"(クリア)と言う魔法で姿と気配を消していた。
これは"もう一人の自分"(ドッペルゲンガー)を応用した魔法だ。
俺は居候であり正式に煌帝国に籍を置いたワケじゃねぇからな。
葬式の様子を見てたけど…ありゃ凄かったな…。
権力って意味で怖かった…。
「白龍!! 何故あのような事を…」
「今が時なのです、姉上…」
「…え?」
あの時の白龍の行動の意味がわからなかった俺は二人の後を追ってみた。
「紅炎とあの女の結託に亀裂が…俺も力を手に入れた…今なら姉上を守れます」
「な…何を言って…!?」
「父上と兄上達を殺したのは母上です」
『(!?)』
「…え?」
親父と、息子を…家族を…殺した…?
「すぐにはわからずとも構いません
しかし姉上も…気付いておられたはずだ…母上が変わってしまった事に…
そしてその背後にいる<神官>集団こそ、この国を操る<アル・サーメン>」
『(なっ!?)』
煌帝国にアル・サーメンが絡んでいたのか!?
「奴等を滅ぼす…俺と姉上で…そして…正常な国を取り戻す…!!」
「いっ…!?」
白龍が白瑛の腕を掴んだ。
感情が露になって、今迄の白龍と別人に見えた。
「その為だけに、俺は今日まで生きてきました!!」
「…無理よ…」
「!? 何故です姉上!?」
「白龍…白龍!!」
白瑛は白龍の手を振りほどいた。
「貴方…昨日の紅炎殿の話を聞いていなかったの?
"分裂は滅びを招く"と…内乱などもっててのほか、紅炎殿がさせないでしょう
たとえ身の内に何を飼っていようとも、煌帝国は…世界は、ひとつです」
「…せかいが…ひとつ…?」
白瑛の言葉を反復する。