第15章 Side Cの事情
『悪いけど、僕は忙しいから君のお見舞いには行けそうにない。退院は今週の日曜日って聞いたけど』
「はい、思っていたより回復が早かったので」
『そう……他の人は知ってるの? 退院日』
「いえ、今日そういう話になっただけで、これから他の人たちに伝えようかと」
『誰にも伝えないで』
「美風さん……?」
『邪魔されたくないから。いいね?』
――何の? とは聞けそうにない。
「わかり、ました」
『絶対だからね。特に、カミュに言ったら怒る』
「怒るんですか!?」
『じゃあ、仕事に戻る』
「はい。お仕事頑張って下さい」
『うん……天音』
「なんですか?」
『……ううん。無理はしないように』
「わかりました!」
あっさりと電話は切れてしまう。肩の傷に触れ、未だ包帯の巻かれた感触を確認すると、少しだけ苦笑いが出る。
回復と言っても、怪我のことではなく、全体の調子のこと。怪我自体は動かしてもいい具合まで癒えたが、正直なところ……痕に関してはもう苦笑いしか出ない。病院の先生からは、痕は少し残るのではないかと告げられている。
刃物の傷というのは、ほとんどが切り傷であるため、深ければ深いほどその痕は残る。
気にしていないといえば、嘘になる。痕が残るかもしれないと不安になればなるほど、この包帯を取るのが怖い。