第14章 それぞれの理由
突如、携帯の着信音がこの空気を切り裂くように、鳴り響く。
「着信?」
「そうらしい。では、また来よう」
「いつもありがとうっ!」
「安静にしていろ」
扉の開閉の音が聞こえ、出て行ったことを確認すると、被っていた布団をどけた。テレビはもう、美風さんを映してはいなかった。
気分転換にと、安静にと言われたにも関わらず、私はゆっくり部屋を後にした。
病院の中庭まで下りて、木陰のベンチに座る。それだけで、少しは気が紛れる。あれから結局、誰からの口からも壱原さんのその後を聞くことは出来なかった。どちらにしても、教えてもらったところでやはり私に出来ることはもうないように思う。
精一杯、彼女と向き合っては見たものの……その結果周りを傷つけてしまう形となってしまったのは、私の責任でもある。あんなにも心配をかけてしまうこととなって、正直なところ反省している。
「上手くいかないもんだねぇ」
独り言を風に乗せ、空へと放つ。空から一枚の真っ白な紙……が。
「紙?」