第14章 それぞれの理由
「また美風の番組でも見てるのか」
「あ、カミュ。花瓶、ありがとうございます」
「折角の花を枯らしては勿体なかろう」
お見舞いに貰った花をわざわざ花瓶に生けてくれた。あの事件以来、カミュは熱心にお見舞いに来てくれる。彼も仕事があるだろうに……。
「……会いたいな」
ぽつりと、小さく零れた。
無意識に口にした言葉は、誰宛のものなのか。
「天音、お前……」
カミュの言葉ではっと我に返り、苦笑いを答え代わりに向けた。
画面越しで見つめる。こんなにも遠い、どうしても、遠い。
「早く、良くなって美風さんにいいとこ見せないとです! ちょっとだけでもいいんです。可愛くなったねって、言われたいなぁ……なんて」
欲が生まれ始めたのだろうか。望めば望むほど、何かが崩れては変わっていく。最初はそれがとても怖くて、閉じこもってしまったけれど。