第13章 Autumn編 D
「一ヶ月、安静にする必要がある。それまでには、美風も戻ってくるだろう」
「美風さんに言ったんですか!?」
「いや、仕事に支障が出ては困るからな……まだ伝えてない」
「……そのまま、伝えないでもらえますか?」
「それは出来ん。これは全部、あいつの不始末のせいだ。あいつがしっかりと、壱原ユイに釘を刺しておけば、こんな事態にならなかっただろう。それに寿も悪い。仕置きだ」
「あははっ、カミュってばお母さんみたいですね」
「お母さんだと? もし本当にそうだとしたら、わざわざ身を晒して危険な場に赴くと思うか?」
「カミュ……」
「聞いて、くれるか?」
頬を撫でる彼の指が、私の唇をなぞる。一気に体温が上がる。
私はこんな彼を知っているだろうか?
心臓の音が煩く思えて、触れられている感覚を知れば知る程に私は彼から目が離せなくなる。しかし……。
「いや、やはりなんでもない」
離れていく体温に、ただ"ずるい"とだけ思った。
そんな顔をされて、私はどんな言葉を返せばいいのか。
流れ続ける美風さんの歌声が、私たちの行いを見ているような気さえした。
扉の向こうで、足音が微かに。