第13章 Autumn編 D
「あ、わた……し」
「俺がわかるか? 天音っ……」
「わかり、ます。カミュさん」
彼の名を口にした途端、優しく抱きしめられた。
「カミュと、呼べ」
「……カミュ?」
「もう一度」
「カミュ」
「もう一度だ、馬鹿者」
「酷い……カミュ」
「大馬鹿者だ、本当に」
冷たい手が、頬を撫でる。心底安心したような、彼の顔を見れば全てが現実だったことを知る。
「どうしたんですか、私」
「聞きたいか?」
苦笑いを浮かべるカミュに、これは聞かない方がいいのか……と思い「いいえ」と答えた。
辺りを見渡せば、病室であることを知る。通りで、薬品に嫌な匂いがすると思った。