第13章 Autumn編 D
暗闇の海が、私の身を沈めていく。
鉛のように重いのは何故だろう? 淀んでいく視界に、指一本さえ動かせない。
もしこの海が融けてなくなってしまっても、そんなこと問題じゃない。
――歌声が聞こえる。
澄んだ歌声。私は知っている。一度だけ、どこかで聞いたことがある。
安心して、再び目を閉じた。
意識が浮上した頃、肩に激痛が走って目が覚めた。
「いっ……!!」
「っ……! 気が付いたか!?」
白い天井、見慣れない部屋。心配そうな、カミュさんの顔。テレビから流れる、美風さんの……歌声?