第1章 お姫様にはまだ早い
外に出れば、眩しい程の太陽が待ち構えていた。それ以上に、いきなりお姫様だっこをした男女が街中に現れたことで大勢の視線がこちらへと向けられる。
――沢山の視線、嫌だ、帰りたい。
ぎゅっと目を閉じ、視線から顔を背ける。少しだけ、私の身体を抱く美風さんの腕の力が強くなった気がする。
「天音、顔を上げて」
「な、何で……そんなことを」
「じゃあ、こっち見て」
恐る恐る彼の方へと顔を上げれば、今まで見たことのないような優しい笑顔が、いっぱいに映る。あまりにもかっこよくて、綺麗で、頬が熱くなる。
「うん、やっぱり僕の見立ては間違ってなかった」
「美風さん……?」
遠くの方で、女性の黄色い悲鳴が聞こえた気がしたが、その全てが彼の言葉で消えていく。
「天音、とっても可愛いよ。似合ってるじゃん、そのワンピース」
彼の視線が近くにあったショーウィンドウへと向けられる。それに習うように、私も視線を向けた。そこに映った自分を見つめて、思わず息をのむ。