第1章 お姫様にはまだ早い
「まさか、私がこのワンピースを着るなんて……」
試着だとしても、少しだけ嬉しいかもしれない。その点では、美風さんに感謝する必要があるかもしれない。慣れない手つきでワンピースを着ていく。こ、これでいいのだろうか?
鏡で確認するのも恐ろしくて、早く終わらせたくてカーテンを開けて美風さんを探す。
「あ、美風さん」
「終わった?」
「はい、終わりました……けど」
カーテンを開けきり、美風さんの前へと姿を見せる。美風さんは目を見開き、私の方を凝視する。やっぱり、全然似合ってないんだろうな……ブスすぎて驚いているのかもしれない。なんで今日はこんなにも惨めな思いをしなくてはいけないのだろう。
「……天音」
「なん、ですか?」
「ああ……うん、決めた」
「?」
ふわりと、彼にお姫様だっこされる。
「み、美風さんっ!?」
「鞄を持って……っと。店員さん、このワンピースお買い上げね。請求はここにお願い」
「か、かしこまりました。……!! シャイニング事務所!!?」
「それじゃあ」
美風さんは店員さんがぽかんとしているのをよそ目に、そのままお店を出る。え、このまま!!?