第12章 Autumn編 C
「あれ……」
ドライヤーを後ろから奪われる。一体誰が? 振り返れば、カミュさんが仏頂面で立っていた。
「い、いつの間に!?」
「誤解のないよう言っておくが、ノックはしたぞ」
「聞こえてません」
「ドライヤーのせいでな」
ドライヤーの電源を入れたことで、私の次なる言葉は出てくる前に排除された。
冷たい指先が、髪を梳いて私の髪を徐に乾かし始めるカミュさん。この人が何を考えてここに来たのか、何を想っているのかわからない。こうして私に構ってくるカミュさんの本音を、知ることが出来たならどれだけいいか。
電源が切れる。静寂が部屋を包んだかと思えば、後ろからふわりとカモミールの香りが全身を満たし始める。さらりと私の首筋に、カミュさんの綺麗な髪が流れ落ちたかと思えば、彼の優しい腕の中に抱かれていた。
鼓動の音が、聞こえたりはしていないだろうか?
ぎゅっと感じる生温い体温、ぞくりとするような吐息。