第1章 お姫様にはまだ早い
「ねぇ、前髪少し切ってもいい?」
「な、な、なんで!?」
「天音はなんでが多いね……折角いいもの持ってるのに、それじゃあ台無しでしょ」
「前髪は……や、やめてください。こうしてないと、私……」
「顔が暗く見えるから駄目。切るね」
「人の話聞いてます!?」
聞いた癖に……っ! 前髪を掴まれ、これだけは阻止しなければと抵抗しようとするが、あからさまに嫌な顔をされ、結局私が折れる形となる。
視界がだんだん拓け、折角前髪で隠していた顔が、前髪を切ったことで曝け出すこととなる。はあ……なんで私がこんな目に。
「なんだ、やっぱり切った方がいいじゃん。正解だね。はい、最後はこのワンピースを着るだけ。着方はわかる?」
「え……えっと」
ワンピースって、どう着ればいいのかな?
洋服を持ったまま固まっていると、美風さんがこうして着るんだよと服を着たまま自らでシミュレーションしてくれた。とりあえず、なんとか着れそうになったとこで美風さんが「終わったら呼んで」とフィッティングルームを後にする。