第11章 Autumn編 B
「不純な動機でも構いませんっ、私のせいで美風さんが馬鹿にされるのは嫌です! あの人の隣に、他の誰でもない私が……私が居たいんです! あの人の隣に相応しい人になりたいです!! でもやっぱり怖くて、どう強くなればいいかわからなくて」
「その話は、美風には……?」
「過去にそんなことがあっただなんて、恥ずかしい自分を知られるのはもっと恥ずかしくて……言えてません」
「ふんっ。愚民ごときが今日明日ですぐ強くなれるなら誰も苦労せん」
「……仰る通りです」
「出来ることから始めればいいのではないか……? 何も難しいことはあるまい」
「出来ること、から」
「……今日の練習は行かなくていいのか?」
「……! 私、行ってきます!!」
「ああ」
「カミュさんっ」
「……なんだ」
下手くそな笑顔を、カミュさんに向けた。
どうすればいいかとか、何が正しい間違っているとか、ごちゃごちゃ考えてばかりで足が一向に動かない。止まったままじゃ、何も動き出さない。
今自分に出来ることを、始めるのでいいのなら……私がやるべきことは一つだ。
「ありがとうございました……っ!!」
「……っ!」
ほんの1cmの勇気だけ振り絞って、自分が出来ないことは後回しにして。
やれることをやらなくちゃ。勿体ないと、初めて思えた。