第10章 Autumn編 A
「歌もダンスも下手」
ぐっと胸倉を掴まれ、強制的に上を向かされ視線が絡む。不敵に笑う彼女が、ふと悪魔のように映った。彼女の声は、月宮先生の耳に入らないように小さな声で、けれどはっきりと私の元へ届けられた。
「ブスが夢見てここに来ちゃったんだよね? 美風さんになんて言ってパートナーにしてもらったの? 早く消えろよ」
それからにっこりと微笑んで、先程とは違う声色で言葉を紡いだ。
「先生、彼女足に擦り傷してるみたいなんで、あたしが連れていっていいですか?」
「そうなの!? わかったわ、いいわよ」
「立てる? 星織さん」
私の腕を、自らの肩に回し愛想のいい笑顔でそのまま私を教室から連れ出した。
保健室についたところで、扉を閉めたと同時に違う音が聞こえ、鍵が閉められたような音に私の身体は更に強張った。