第9章 Summer編 C
「ねぇ、星織さん。わたくしと勝負しませんこと?」
「愛佳さんと、私が……? えっ、絶対勝てませんよ!」
「最初から勝てないと思っているようでは、何にも勝つことは出来ませんわよ」
「うっ……」
「わたくしが勝ったら、美風さんを渡してください」
「……なに、言ってるんですか?」
「前々から気に食わなかったんですのよ。貴方みたいな芋臭い女が、美風さんのパートナーだなんて。だから、美風さんを貴方という檻から解放して差し上げますの」
「私が勝ったら?」
「認めてあげますわよ、パートナーであることを」
「……受けます」
「そう。では明日正午、広場でお会いしましょう」
言葉を残し、愛佳さんはベンチから立ち上がり、それ以上は何も言わず去っていった。
「やっぱり、他の人から見ても不釣り合いなんだよね」
わかっていたことなのに、どうしてこんなにも悔しいんだろう。
嫌だ、美風さんが誰かのパートナーになってしまうなんて。どんなに不恰好だとしても、私は美風さんのパートナーとして、隣にいたいのに。
「愛佳さんが美風さんの隣に並ぶなんて、想像したくないなぁ……」
これは、確かな気持ちだった。