第9章 Summer編 C
夢から醒めた頃、自室で眠っていたらしい。外は暗く、部屋に差し込むのは月の光くらいだ。昼の出来事を思い出して、ぎゅっと体を抱きしめた。
このまま考えたまま、部屋に閉じこもっていたくない……。
喉の渇きに従うように、外の自販機まで出かけることにした。
流石に夜中ということもあり、誰の姿も見当たらない。静かで、とても安心する。何処か喧騒から離れた場所みたいに思えて、自販機で買ったコーラを一口飲み干して、空を仰いだ。頭上には満点の星と、美しい月だけが私を見ていた。
「まるで、この世界で私は一人きりみたい」
「……ポエムですの?」
「!!?」
勢いよく振り返れば、愛佳さんが寝間着姿でお財布片手に現れた。
「えっ、えっ、な、なんで」
「見てわかりませんの? 飲み物を買いに来ただけですわ」
「そう、ですか……」
「……少し、いいかしら?」
「え? ど、どうぞ……?」
私たちは近くのベンチに腰掛けて、飲み物を飲みながら月を眺めていた。
「月っていいですわよね」
「そうですね、安心します……見ていると」
「……わたくし、貴方が美風さんのパートナーだなんて、認めませんわよ」
「知ってたんですか?」
「貴方本当に疎いんですわね。貴方みたいなちんちくりんが美風さんのパートナーだってこと、この参加者の中では噂の中心ですわよ」
「ええ!? し、知りませんでした」
「ふん、わたくしの方がよっぽど美風さんに相応しいですわ」
「そうかもしれないですね」
「なんですの! その弱気な発言は!!」
「えええ!!!?」
お、横暴だ!! とは言えるわけもなく、それが駄目なんだ! といきなり駄目だしされてしまった。え、なにこれ辛い。