第9章 Summer編 C
「遅いですわよ! 星織さん」
「……えっと、先に愛佳さんがどうしてそんな恰好をしているか、聞いてもいいですか?」
「よくてよ! まず最初の戦いは、愛妻弁当対決ですわ!!」
「うっ、そ、そういう正統派対決ですか」
「貴方、料理は嗜んでいるのかしら?」
「……お湯を沸かす程度なら」
それって料理って言わないんだっけ? と思いつつも、堂々とそれだけ伝えた。一瞬愛佳さんの表情が歪んだ気がしたけど、小さく咳払いをしたあとにはいつもの愛佳さんに戻っていた。
「女性にとって料理というスキルは大切ですわ!! わたくしとの料理対決、受けてくれますわね!?」
「……わかりました」
「おうおうおう! なんか面白そうなことやってんじゃねぇか! 俺が審判を務めてやろう!」
「翔くん!?」
「来栖さんが審判を? ふふ、よくてよ!! さあ、早急に戦いを始めましょう星織さん!!」
「……望むところです!」
三人で許可を貰い、早乙女学園の家庭科室を借りることに。どうやら既にある程度の食材を用意された状態で、ここから作り始めるらしい。あれ、そういう料理番組なかったっけ? いや、気のせいだよね。
「それじゃあ二人とも、準備はいいか?」
「いいですわよ!」
「大丈夫です」
「んじゃ、行くぜ……愛妻弁当対決! 藍の胃袋を掴むのは誰!? スタート!!」
愛佳さんはスタートと同時に、素早く食材を選んで取り掛かる。
だが、私はやかんを片手に一人悶々と考え込んでいた。
――料理ってどうやってするんだぁああああああ!!!