第8章 Summer編 B
「違い……ます。ごめん、なさい……っ」
「天音?」
「美風さんに……あんな顔させて、私……っ」
「……どんな顔してた?」
「苦しそうな顔、してました……」
「そっか」
美風さんは元々感情表現が少なく、表情も喜怒哀楽激しい人ではないけれど、今までにあんな顔を見たことはなかった。しかもそんな顔を、自分がさせてしまっているのかと思うと、心が痛んだ。
どうして彼があんなことをしたのか、それ以前に……彼の苦しそうな顔が映って、どうしうもなく胸が締め付けられた。
「ごめんなさい……っ、私が……」
「ああもういいって。普通押し倒されたら、そっちより怖いとか、思うもんじゃないわけ? 天音って変な子」
どうしようもなく、彼の腕の中が安心する。
「天音は僕のパートナーなんでしょう? だったら、あんまり……他の人といたりしないで。カミュとか、翔とか」
「……なんでその二人と知り合いなの……知ってるんですか?」
「秘密」
ただ、いつまでも彼の優しい手に、甘やかされて。