第8章 Summer編 B
「何のために変わるのか、貴様は見つけることが出来たのか?」
「まだです……」
「話にならんな。俺達は優勝する、そのためだけに必要なことだけをする。目指す場所がなければ、辿り着く先もまた曖昧なままだぞ」
「……耳が痛いお言葉ですね」
「愚民には丁度いいだろう?」
さもそれが当たり前だとでも言いたげな瞳が、私を捉える。言葉を脳内で反芻させ、瞳を閉じた。隣の気配が不意になくなった気がして、目を開ければ何故か目の前にカミュさんの顔があった。
「っ……!! な、な、なんです!!?」
「いや……なんでもない」
カミュさんは「部屋に戻る」とだけ告げて、立ち去ってしまった。ああわけがわからない! カミュさんは本当に掴みどころがなくて、それどころかあの独特な雰囲気に私は飲まれるばかり。駄目だなぁ……。
「なぁにしてんのさ……」
「え!!? み、美風さん!?」
何故か凄いタイミングで美風さんが眉間に皺を寄せ、訝しげに現れた。あれ、もしかしてさっきの見られて……っ!
「……何顔赤くしてんの」
「ええ!? あ、赤いですか!?」
「嘘……動揺しちゃって。そんなにカミュに迫られて、どきどきしたの?」
「っ……!?」
何が起きたかわからない。目の前が反転して、ぐっと肩を押されたと同時に背に草木の感触を覚える。
美風さんの顔が、近い。彼越しに空を見た。