第8章 Summer編 B
ふわりと甘い香りが包み込む。カミュさんからは意外にもバニラの香りがして、不覚にも心拍数が上がっていく。
「呼びに行くな、必要ない」
「カミュさ……ん、離してもらません……か?」
私のその言葉を聞くと、カミュさんはあっさりと私を解放してくれた。しかし、手は掴まれたままで、再び先程の木陰へと連れ込まれる。何かされるというわけでもなく、何故か隣に並んで座り込む。
「カミュさんは、愛佳さんと仲がよくないんですか?」
「何故そう思う?」
「呼びに行くなってことは、会いたくないのかなと」
「……あいつは、言葉を交わせば煩いだけだからな」
「彼女をパートナーに選んだ理由とか、聞いてもいいですか?」
「ふんっ……愚問だな、見ればわかるだろう?」
まぁ、容姿端麗でお嬢様……らしいですし。教養も行き届いていて、さぞ素晴らしい女性なのでしょう。という想像。
「カミュさんのことですもんね、ちゃんとした女性を選びますよね」
「自虐か?」
「にやにやしないでください……」
「してなどおらん」
暑いせいなのか、それとも緊張しているせいか、額に汗が滲む。木陰とはいえ、やはり暑いのには変わらない。