第7章 Summer編 A
「いないじゃないの!」
「そうみたいですね」
「わたしくはまた……カミュに」
「カミュさん気まぐれそうですし、探せばいますよ! ね、一緒に探しますから」
「……一緒に?」
「ん? はい」
「よくてよ!! 仕方ないわね、一緒に探すことを許可してあげますわ!!!」
「あ、はい……」
愛佳さんは勢いよく綺麗な洋服のスカートを翻し、駆け出してしまう。その後ろ姿はまるでシンデレラが王子様を追いかけるかのよう。カミュさんと愛佳さんが並んだら、絵になるかもしれない。
私も追いかけようと前へと足を踏み込むと、後ろの方へと誰かに引き戻される。
腕を掴まれた感触。振り向けば、カミュさんが先程と変わらない表情で私の腕を掴んでいた。
「あ、あれ? カミュさん?」
「少し付き合え愚民。一人で木陰で本を読むのも飽きた」
「なら愛佳さんを呼び戻してきま……っ」
引き寄せられるままに、私の身体はカミュさんの胸の中へともたれ込む。何が起きたかのか、まったくわからず何も言葉に出来ない。
「……あ……の」
「呼びに行くな」
カミュさんの冷たく、美風さんとは違う低い声が、耳元で吐息交じりに忍び込んだ。