第7章 Summer編 A
「お前は、知らぬ間に少し変わったみたいだな」
「そう……ですか?」
「出会った時は、この世で自分が一番不幸とでも言いたげな顔をしていた」
「なっ……!」
「でも、今は違うな」
「……そうでしょうか」
「少しだけ、明るくなった気がする」
夏の日差しで、暗い私の表情を照らしてくれているだけでは? なんて皮肉は言えるわけがなかった。カミュさんと話すのは、あの時以来だ。とても失礼な人だという印象が未だに根強く残っている。
「もし、本当にそうだとしたら美風さんのお陰です。あの人が私をいつも変えてくれるんです」
「また美風か。少しは美風から離れたらどうだ? そうやっていつまでも自分を変えてくれるのは、美風だけだ、と?」
「別にそんなつもりはありません! どうして、そういう言い方しかできないんですか!?」
「現に貴様はそうだからだ。ちょっと変わったかと思えば、まだ甘さを捨てきれんとは」
カミュさんは私が入っている木陰へと入り込む。まるで自分のテリトリーを荒らしにきたエージェントのように見えた。
「自分を本当に変えることが出来るのは、この世でどこを探しても自分ただ一人だ。これは絶対に変わらない」
「そんなこと……」
「微量な変化はアクセサリーに過ぎない。他人から受け取れるのはその程度だ。だが綺麗なドレスを堂々と着たければ、まずはお前自身がそれに着られないよう磨くしかない」
「……」
カミュさんの言葉は、厳しくて冷たいのに美風さんとは違って容赦のないその言葉には、確かな真実がある。その通りだと、納得させられてしまうところがある。