第7章 Summer編 A
走り疲れてしまい、私はあれから行きつけになり始めていた泉のある場所へと足を延ばしていた。おかしいな……単純にこの書類を彼女に届けるだけでよかったのに。
あ、名前聞くの忘れた。
「はぁ……」
泉に手を浸し、夏の日差しを木の影で凌いでいた頃。
「愚民、その泉はこの時期日差しの熱でたいして冷たくはないぞ」
「あれ……? カミュさん?」
いつの間にか、同じく木の陰で日差しを避けていたカミュさんがいた。通りで何処を探しても、見つからないわけだ。
「カミュさんはよく此処に?」
「ふん、貴様に答える必要はあるか?」
「……ないですね」
苦笑いを浮かべると、カミュさんの眉間の皺が一つ増えた気がした。