第6章 Spring編 D
「合宿らしくどっかハワイとか行きたくね? 泳ごうぜ!!」
「まだ春だから、冷たいよ……」
「そこは気合いでカバーだろ! 気合いで!!」
翔くんの言葉に苦笑いを浮かべながら、もう一度写真を見つめる。
もっと、彼の隣に並ぶに相応しい女の子になって、胸を張って一緒に歩けたらいいのに。
「いやいや、違うだろそれは……」
「何ぶつぶつ言ってんだ?」
「なんでもない! 食堂行こう!」
「お? お、おう」
私の心はまだ、はっきりと未来を描けてはいない。
なりたい自分、理想の自分。考えてみるけれど、周りの女の子たちを見るたびに、わからなくなっていく。
そもそも、自分ってなんだろう? 今の自分のことも、まだちゃんとわかっていないのに、理想の自分なんてどう思い描けばいいんだろう?
私はこの流れに身を任せて、ただ流され続けているだけに過ぎないことにさえ、気付けていない。