第6章 Spring編 D
「でも関わりたいって思っちゃ駄目? 今はそうでも、これから関係のある二人になりたいって思っちゃ駄目? それが例え、友情でも愛情でもないとしても。駄目?」
「……嫌です、そんなの」
「どうして? それが嫌だなんてまるで……」
優しい声色が、私の耳をすり抜けていく。
「僕に、嫌われたくないみたいじゃない」
知られたくなかったのは、愚かな自分を知ってほしくなかったから。惨めな自分を、知られて、あの時のように笑われたくなかった。私みたいな奴が、学校でモテる男子に告白しただなんてって笑われたらどうしよう。
滑稽な私を、美風さんには知られたくなかった。
嫌われたくない? どうして?
「私は……」
マリンブルーのワンピースが、風で揺れた。混乱する頭を抱えながら、たどたどしく口を開いた。
「わかりません……そんなの」
美風さんの手が、私の頭を撫でた。私は俯くことしか出来ない。怒っているのだろうか? 怖くて、顔をあげられない。