第6章 Spring編 D
告白なんてしなければ、好きならなければ、あの時も、今も、こんな思いをしなくて済んだかもしれないのに。
「……言いたく、ないです」
「言ったら何かが終わる? 壊れる? 崩れる?」
「違い、ます……」
「僕に言うのが後ろめたい? 知られたら、恥ずかしい……?」
「っ……、美風さんには関係ないじゃないですか!!!」
思わず自分の心を隠すように、声を張り上げた。はっと我に返って彼を見れば、表情のわからない彼の無表情で冷たい視線が射抜く。
「うん、関係ない。だって僕はあくまで、他人だから」
今までとは違う、突き放すような言葉。身体が強張って、上手く表情が作れない。唇が、震えて声も出ない。
嫌われた? うんざりされた? 幻滅された?
ぐるぐると思考が巡って、ぎゅっと両手を胸に抱いた。