第1章 お姫様にはまだ早い
「あ、これ……可愛いな」
不意に目についた、ショーウィンドウに映る可愛い淡いピンクのワンピース。きっと可愛らしい女の子なら、このワンピースがとても綺麗に映えるのだろう。無駄だとわかっているけど、どうしても手に取ってみたくなってお店の中へと思い切って入る。
店内は女性らしい内装で、ちらほらと他の女性客の姿もある。ちらりと他の客や、店員さんの視線が痛い気がした。
ワンピースに近寄り、手に取って鏡の前で合わせてみる。……やっぱり、私には全然似合わない。不釣り合いの可愛い洋服に、惨めな気持ちは増すばかり。どこからか、くすくすと笑う声が聞こえてどきりと心臓が鳴る。
「ねぇ、あの子……」
「ださっ」
「……っ!」
慌ててワンピースを戻して、早足で店を出る。ほら、やめておけばよかったんだ。ブスな私が可愛い洋服を手に取るなんて、馬鹿みたい。視界が滲んできて、苦しくて俯いたら全て流れてしまいそうでどうしたらいいかわからなくなる。
「ねぇ、君っ!」
「……えっ?」
ひんやりと冷たい手が、私の手を掴む。驚いて振り返ると、マリンブルーの髪を靡かせた綺麗な顔をした少年が真っ直ぐこちらを見つめていた。吸い込まれそうな程に、綺麗な海の色をした瞳の中に、私の姿が映った気がした。