第5章 Spring編 C
「どうかした?」
「え? 何がですか?」
「何か言いたげな顔してるから」
「あ……えっと、美風んさんは男の人なのに、とてもメイクがお上手だなって」
「ん――……男も少しくらいはメイクするんだよ? 芸能人は特にね」
「え!? そうなんですか!!?」
「ドラマとか、雑誌の撮影の時は映りをよくするために、少しやるからね。女性ほどじゃないけど……だからナチュラルなのしか出来ないよ、僕は」
「ナチュラルな方が安心します」
「安心って何。派手なのだと僕が失敗するって?」
「違いますよ!!」
メイクを全然したことのない私が、いきなり濃いメイクをすると違和感しかないから……とは言い出せなかった。
メイクを終え、鏡を見せてもらうとあの日見た自分の顔がそこにあった。
「やっぱり美風さん凄い!!」
「これくらいで驚かないでよね……はい、行くよ」
再び繋いだ手、二人で校舎を出るとまた違ったどきどきがやってくる。
このデート。大丈夫だろうか……?