第5章 Spring編 C
マリンブルーの爽やかなワンピースに袖を通す。緊張で、無意識に手が震える。覚えたてのメイクを、たどたどしくやり終えて鏡とにらめっこ。あの時美風さんがしてくれたメイクとは全然違っていて、失敗かと思い始めた。
「こんな顔で会えない……かも」
相変わらずの冴えない顔。深く溜息をついて、洗面所でメイクを落としてしまうことにした。とりあえずファンデーションで肌だけ整えてみる。うん、これならまだいいかも。
「可愛くなくて、がっかりするかな……」
自分なりに、今日のことを想って今の私に出来る精一杯のお洒落。それでもたぶん、周りの女の子たちの足元にも及ばない。
なんで上手く出来ないんだろう、どうしてあの時みたいに綺麗に出来ないんだろう。
「美風さんってどんな女の子が好みなんだろう……って何考えてるんだ私っ! うわ、やばい時間!!」
前髪を手でそれとなく整えて、鞄をひっかけ部屋を飛び出す。慣れない洋服に、周りの目が気になって歩くのが怖い。ちらちらと綺麗な私服を着こなした女の子たちとすれ違う。きっと彼女たちも私と一緒で、今日デート用のコーディネートをしているのかもしれない。
横目で、周りの女の子たちを見てみる。派手な子もいれば、ボーイッシュな子もいるし、お姫様みたいに可愛らしい人もいる。
――私も、あんな風になれたら……。
不意に身体が誰かとぶつかってしまう。