第4章 Spring編 B
私達は社長さんに外出許可を頂き、久しぶりに街へ出た。
街といえば、あのワンピースを着た時のことを思い出す。あれは強烈な思い出だ。たぶん早々に忘れないと思う。
「そういえば、美風さんはどうしてあの時街にいたんですか?」
「ん――……知りたい?」
「知りたいです!」
「液晶画面、見たよね? あの時間帯に流れるように設定されていたから、それを糧にペアでも見つけてさっさと終わらせようかと思って」
「(てことは、私に声をかけたのは偶然なのかな)」
たまたまそこにいたからとか、そんなとこだろうか。そう思い始めると、なんだか少しだけ寂しい気もする。そうだよね、わざわざ私を選ぶなんてよっぽど気まぐれが起きない限りは……。
「あ、でも……それよりも目について離れなかったのは、天音の存在だね」
目をぱちくりさせ、驚いた顔を向ければクスッと彼が笑みを零す。
「なんであんな子が、フリルのついた可愛らしいワンピースを見つめてるんだろうって気になった。何処を見ても、同じような子ばかりだったから、余計目立ったのかもね」
「よく、スカウトしようと思いましたね」
「なんでだろうね?」
可愛らしく小首を傾げ、彼は空を仰いだ。海のように透き通った瞳が、似た色である空を映しているのだと思うと絵になる。