第4章 Spring編 B
「来週デート服選ぶんでしょ? じゃあ、僕が見立ててあげるよ」
「藍ちゃん! こういうのはね、自分でやらないと意味ないのよ!?」
「天音にはまず、自分で選ぶための目を養ってもらわないと……上下パジャマで来られたらどうするの」
「……美風さん。流石の私でも、それはないです」
白い目で見て告げれば、顔色一つ変えず「そう?」と彼は首を傾げた。
「とにかく、天音は僕のパートナーなんだから勝手なことはしなくていいの。僕がやることなんだから」
「あら、藍ちゃんったらまるで天音ちゃんのプリンスね」
「ぷっ……!!?」
「天音は一々過剰反応しないの。ほら、行くよ」
さりげなく繋がれた右手が、いつもと変わらない彼の体温で冷えていく。低体温なのかな? でも他の人にはないこの手が、私は実は好きだったりする。この手を取ると、出来なかったことも出来てしまえるような……。
「美風さんは、魔法使いみたいですね」
「何か言った?」
少しだけ、彼の声色が楽しそうに聞こえたのは、気のせいだろうか。