第28章 Secret True END
なんとか救急車へ乗り込むことが出来た、もうその頃には混濁した意識の中でカミュは、眠り始めていた。
彼の前髪をはらりと払うと、そっと頬へと触れる。
「ごめんね……」
それが何に対するものなのか、私にも、わからなかった。
手を握れば、いつもより体温が低い気がして怖くなる。この人を失うことが? 私を庇って傷ついた彼への罪悪感で? ぎゅっと、握る。
「カミュ……」
ただ、彼の名を口にすることしか、出来ずにいた。
病院へ到着すると、意識のない彼は緊急治療室へと運び込まれる。私は治療室の外で、椅子に座り目を閉じて彼の無事を祈り続けた。
本当に、この人はどれだけの無茶を重ねて私を想うのか。
"お前のためならば、俺はただの男になろう。お前を唯一愛する、ただの男に"
あの日の言葉が、脳内で反芻する。息を吐けば、寒さで白くなる。そうだ、まだ十二月なのだ。急に季節感を肌で知ったところで、別に何にもならないけれど。
気付けば、治療中のランプは消えた。