第28章 Secret True END
「行け、天音。お前は……コンテストに出る、んだ」
「やだ……っ、カミュを置いてなんて、嫌……っ」
「……そんな顔をするな。見たく、ない」
「……っ」
「行け……」
彼の手が離れていく。手を伸ばそうとするけれど、それが正しいのかさえわからなくて、力なく落ちる。
「……天音」
「藍くん……?」
藍くんが、真剣な眼差しで私の背を強く押した。カミュが運ばれていく方向へと。
「君は、とても残酷な存在だね。でもいいよ、僕が望んだのは……君が優勝してくれることじゃないから」
「何を、言って……」
「僕はこの事態を招いた犯人の身柄を拘束して、警察に突き出してくる。忙しいから天音に構ってる暇ないんだよねぇ」
「え……?」
「もう、ちゃんと言わないとわかんない? 行ってきなよ、カミュのところへ」
「でも……」
「はい、もうでもとかだってはなし! ……わかっていたんだ、きっと」
藍くんは、目を伏せてもう一度私の背中を押した。
「早く行きなって、天音の信じる道を貫いてほしい。それだけだよ」
「……ごめんなさい、私……カミュのところへ行ってくる!!」
藍くんと私の間にある、確かな何かが今、ぷつりと糸が切れるような感覚を覚えた気がする。それでも、振り返ることは出来ない。
これが、私の選択なのだとしたならば。