第26章 夢の終わりはA
「人を好きになると、守りたいものが出来て人は臆病になるかもしれません。でも私は守りたいって思える気持ちを大切にしたい。どんなに自分が傷つこうとも、弱くなろうとも、それでも私の知らないところで、彼にどうにかなってほしくないから! だから……ここにいるんです」
蘭丸さんは、手を離すと不機嫌そうに「あっそ」と言葉を吐いた。
何故、この人は私にそんなことを言うのか、理解は出来ない。でもこれは、ある一種の説教、なのかもしれない。そういえば、カミュも愛佳さんも私に気を使って慰めの言葉以外はかけようとしない。私はそれに甘えていた。
優しい言葉で満たされていれば、そりゃ心は傷つかない。
でも必要なのはそんな言葉だけ? 大切なのはそういうこと?
「自分の力量くらい、考えろ」
マリンゼリーを押し付けられた。怒っているのかと思えば、そうではない素振りを見せる。ちょっとだけ、面倒なタイプの人だ、蘭丸さんは。
受け取ったマリンゼリーを一口食べれば、甘い味が口いっぱいに広がる。甘党で有名のカミュも、好きそうな味だ。
藍くんの髪とな同じ、マリンブルー色のゼリー。
傍らで眠る彼は、未だ目覚める気配を見せない。
「蘭丸さんは、大人なんですね」
「あ?」
「私は、蘭丸さんみたいに考えることが出来ません。思ったらすぐ、行動してしまいます。だから駄目なんでしょうね」
思わず苦笑いを浮かべれば、蘭丸さんは「めんどくせぇ」の一言であしらった。
「蘭丸さんは……人を焦がれるほど、好きになったことはありますか?」
「知らねぇよ」
差し込む太陽の目の前に、雲がかかったのか、太陽は顔を隠した。