第26章 夢の終わりはA
「お前が積み重ねた一年間は、簡単に放り出せる程度だったのか」
「……違いますっ!」
「何が違う? 言ってみろ」
「私にとっても、大切な一年間でした……それに変わりはありません!! それ以上にただ、藍くんのことが……大切だっただけです」
「奴の為なら、一年間でさえも手放すってことか?」
「……そうです。私が今ここにいられるのは、彼のお陰だから……逃げだと言われても構いません。私を庇ったせいで、藍くんが……そんな状況で、まともに舞台なんて立てませんでした」
「ふぅん……だからお前は弱いんだっての」
「っ……、そう言われてしまうと、確かにそれまで……ですけど」
蘭丸さんは私の顎を掴むと、無理矢理上を向かせ彼と強制的に目を合わせることとなる。
「気に入らねぇんだよ、そういうの。愛とか恋とか、現抜かしてるから人は弱くなるんだよ。馬鹿馬鹿しい……お前もな、恋愛なんてしなければそんな悲しい思いをすることもなかったんだ」
「そんなこと……っ」
「誰かを好きにならなければ、惨めな自分を知らないで済む。お前もこれに懲りたら、いい加減目ぇ覚ますんだな」
「……好きになると、弱くなるなんて、そんなことけしてありません!」
この人の言葉は確かに正しいとも思う、けどやっぱりなんだか、気に食わないとさえ思わされる。まるで恋をすることが、悪いみたいに。そんなことはないはずだもの。