第25章 不協和音の鼓動
静かに眠る藍くんには、目立った怪我は見当たらない。巻かれた頭の包帯だけが、痛々しさを物語る。
「君は、本当に藍のことが大切なんだね」
「はい……この人は、私を救ってくれた人なんです。駄目な私を、変えてくれた人なんです……」
「そうか、君が噂に聞いてた天音さん、だね」
「貴方は……?」
「詳しいことは彼のために、言えないけれど……彼の保護者、とでも言っておこうかな」
「そうだったんですか。そういえば、藍くんのこと……まだまだ知らないことばかりなんです、私」
そうだ、知らないことばかりだ。それでも少しずつ、少しずつ知っていければいいと思っていたのに……。まさかこんなことになるだなんて。想像できただろうか?
「藍は、幸せだと思いますよ。大切な貴方を、身を挺してでも守ることが出来て」
「私はこんな守られ方、望んでなんかいません!」
「それでも、だよ。きっと逆の立場になれば、誰もが同じように思うものだ。」
男の人は、まるで慰めるかのように、私の肩をぽんぽんと優しく叩いてくれた。ただ悲しくて、こんなことになってしまって辛くて。