第25章 不協和音の鼓動
「彼は、頭を強く打ったみたいだね。それ以外の外傷は見当たらないけど、目を覚ます様子がない」
「私を庇ったせいで……藍くんは」
彼の頬に手で触れれば、酷く冷たい彼の体温にもう目を覚まさなかったらどうしようと不安になる。嫌だ……こんな最後、嫌だよ。
「ところで君たちは、コンテスト会場を抜け出してきてよかったのかい? まだうたのプリンセスコンテストは終わっていないよ」
「私は……ここにいます、彼の傍に」
「……君はどうする?」
男の人の視線は、カミュへと向けられていた。そうだ! 愛佳さんは……っ。
「俺は、会場に戻ろうと思う。終わり次第、迎えに行く、天音。美風の傍にいてやれ」
「……うんっ」
ぎゅっと藍くんの手を握る。
私はここにいるよ、だから早く、早く目を開けて……っ。
「彼女のことは、僕が見ているよ。君はもういきなさい」
「宜しく、お願いします……」
カミュが静かに病室を出ていく音だけを、聞いていた。