第25章 不協和音の鼓動
車が止まる、きっと病院に着いたのだろう。顔を上げた自分が、きっと想像以上に酷い姿をしていることくらいわかっている。
「このジャケットを羽織っておけ。お前のその姿は、少々病院では目立つ」
「でも……」
「俺に構うな。今は自分のことと、美風のことだけ思っていろ」
「運転手のわたくしは、ここで待っていますわね」
身体を支えられ、病院へと入っていく。愛佳さんはハンドルを握ったまま、私たちを見送った。愛佳さんがまさか、運転できるとは思わなかったけど……お陰で辿り着くことが出来たから感謝してる。
とある一室の前、扉を開けるのを躊躇っていると、代わりにカミュが病室に扉を引いた。
「……君たちは、藍のお知り合いですか?」
「……友人と、彼の恋人です」
病室内には、白衣を着た男の人が一人立っていた。医者だろうか?
私はふらりと、藍くんが眠るベッドへと近づく。なにこれ、静かに眠り続けているだけにしか見えないよ……? 藍くん、目を開けて。お願い。