第25章 不協和音の鼓動
舞い散る雪が、まるで桜のように見えた。病院へと急ぐ車の中、ぎゅっと鬱血しそうなほどに手を握り掌に爪が食い込む。苦しくて辛くて、涙が頬を伝う。
指先で拭われた涙を、一体誰が……? 顔を上げれば、カミュが普段しなさそうな苦しそうな表情を見せている。
「カミュ……」
「泣くな。俺が傍にいる、大丈夫だ……そんなに泣きたければ一人では泣くな、俺の胸の中で……泣いていてくれ」
そっと、彼の手が私の後頭部を包み込んで、胸元へと押し付けるように抱き寄せる。胸の中が熱くなる。ああ、私はまたこの人を困らせて……残酷なほどに、優しい彼に甘やかしてもらっているんだ。
もうこの人の腕の中に、飛び込みことはないと思っていたはずなのに。
「っ……」
声にならない声が漏れた。嗚咽が交じって、上手く息が出来ない。
ぼやける視界に、心が張り裂けそうになる。