第23章 シンデレラ
「大丈夫。今の天音なら、どこまでも行けるよ。自信、持って。信じて」
「ありがとう……藍くん。これが終わったら、皆でクリスマスパーティーしようね」
「そうだね」
音楽が鳴り響く、コンサートが始まりを告げる。藍くんが不意に、私の頬に口付けを落とす。冷たい感触、けれど暖かい。藍くんの綺麗な顔が、視界いっぱいに入ったかと思えば……。
「見ていて、僕のことを」
アイドルたちが、一斉に舞台上へ向かい駆け出す。藍くんも背を向け、スポットライトの下へと飛び出していく。
沢山のアイドルたちが、メドレー式に歌いながらオープニングが始まる。
「ここにいたんですのね、星織さん」
「愛佳さん」
愛佳さんが私の隣で、一緒に彼らの歌に酔いしれる。
「……天音さん。わたくし、絶対に貴方に負けませんわよ」
「愛佳さんっ!? 今、私の名前を……」
「そのドレス。かなり有名なブランドのものですわよ。それが何を意味するのか、貴方にわかります?」
「ご、ごめんなさい! わかり……ません」
「そのドレスの名前。教えてあげますわ」
愛佳さんは、私の髪に一輪の白い薔薇を飾る。
「"シンデレラ" それがそのドレスの名前」
「シンデレラ……」
彼らの舞台が終わる。ぐっと手を胸に、握りしめる。緊張を振り払うように、今までの自分を受け止めた上で。
何もわからなかった、だから怖かった。